ハンドドリップの抽出時間が味や風味に与える影響と
抽出される成分の違いについて
お店や自宅でコーヒーを淹れる手法として最も多く使われているハンドドリップ。
簡単で道具も気軽に揃えることができるため多くの人に利用されていますが、技術次第では求めている味(フレーバー)のみを抽出したり、安定した味を抽出したりすることが可能な奥深い部分もあります。
この記事ではハンドドリップの抽出に関してどのような要因が働き、味に影響を与えていくのかを解説していきたいと思います。
素人から玄人まで使っているハンドドリップ。
自宅でも美味しいコーヒーを淹れたいけどどうやったらいいのかな?
ハンドドリップで味に変化を与える要因
ハンドドリップで味に変化を与える要因として主に①お湯の温度、②お湯の量、③抽出時間、④挽き目の粗さの4つが挙げられます。今回は③抽出時間に着目してハンドドリップの謎を紐解いていきたいと思います。
コーヒーで抽出される成分とは?
「コーヒーの抽出」とはコーヒー豆の中にある成分を引き出すことです。
コーヒーの成分に関してハンドドリップ日本チャンピョンの畠山大輝さんはミネラル(塩味)、酸味、甘さ、タクタイル(質感)、苦味・雑味の5段階に分かれていると述べています。
ではこれらの成分が抽出時間でどのように変化していくのか解説していきたいと思います。
前半に抽出される成分は?
コーヒーのハンドドリップにおいてまず初めに抽出されるのはミネラル(塩味)になります。
ハンドドリップでは多くの場合1投目に蒸らし作業を行いますが、ミネラルは蒸らし作業の1投目の段階に多く抽出されます。そのため実際に蒸らし作業で抽出されたコーヒーを試飲してみるとわかるのですが、この段階ではもの凄く味が濃く濃縮されたコーヒーが抽出されています。
また抽出前半にミネラルの次に多く抽出されているのが酸味になります。
酸味はクエン酸やリンゴ酸、乳酸などすっぱさを感じさせる成分になります。
そして酸味の次に抽出されるのが甘さになります。
ちなみにハンドドリッップの世界チャンピオンの粕谷哲さんは2投目の注湯量で抽出成分のコントロールができると紹介しています。2投目はミネラルの成分抽出のピークが過ぎ酸味の比率が徐々に増えてくるフェーズに突入します。
そのため2投目で注湯量を多くすると酸味が強調されたコーヒーに仕上がります。
反対に2投目の注湯量を少なくすると酸味の抽出が抑えられ、甘さが強調されたコーヒーに仕上がります。
後半に抽出される成分は?
ハンドドリッップでいうと蒸らしの作業が終わり3投目辺りが中盤から抽出後半の段階になります。この時間軸で抽出される成分はタクタイル(質感)が多くなってきます。
タクタイルとは脂質や食物繊維などによるとろみを感じさせてくれる成分でコーヒーの質感が決まる成分となっています。そして最後に抽出されるのが苦みと雑味です。
苦みはコーヒーに含まれるカフェインなどによって感じる味覚ですがコーヒーの味わいを決定づける成分としても有名です。そしてほぼ同時期に抽出される雑味に関してはえぐみや渋みなど美味しくないと感じる成分になります。
雑味もコーヒー豆が本来持っている成分ではありますが、雑味が増えてしまうと「柑橘系のフレーバー」や「フルーティーなフレーバー」などといったその豆が持つ個性を曇らせてしまうため抽出を避けたい成分になります。
そのためハンドドリッップではこの雑味をいかに抑えながら美味しい成分を抽出するかが1番のポイントです。
成分の抽出のまとめ
コーヒーの抽出ではこれらの成分が時間の経過とともに断続的に抽出されるのではなく、すべての成分が時間の経過とともに比率を変えながら少しずつ混ざり合った状態で抽出されます。
ハンドドリッップの前半で多い成分はミネラル、酸味、甘さ
ハンドドリッップの後半で多い成分はタクタイル(質感)、苦味・雑味
この時間の経過でどの成分が多く抽出されるのかを知っておくことが美味しいコーヒーを淹れる近道になるはずです。
時間で抽出するフレーバーを選ぶ
時間の経過と抽出される成分がわかるとハンドドリッップにおいて引き出したいフレーバーを選択して抽出することが可能になります。
初期の段階で抽出を止めるとミネラル(塩味)と酸味が多くなるので酸味が強いコーヒーになります。中盤あたりで抽出を止めると甘さはあるけど苦みがないためあっさりしたコーヒーになり、さらに抽出時間を長くするとトロッとした質感が苦みがあるコーヒーになります。
この機序を応用することで苦みがもっと欲しいと思ったら抽出時間を長くする
逆に質感が軽くあっさりしたコーヒーが飲みたい時は抽出時間を短くする
など注ぐお湯の量で抽出時間を変化させることで自分好みの美味しいコーヒーを淹れることができます。
理想の抽出時間は?
理想の抽出時間に関しては淹れ方によって異なるため正解はありませんが、2分~3分以内に落としきるのをオススメします。
3分を超えてしまうと雑味の成分が多く出る時間のフェーズに突入してしまうので3分以内には抽出できるようにお湯を注いでいきましょう。
また抽出時間を知るためにコーヒースケールがあると便利です。
コーヒースケールとは抽出時間と注湯量を同時に測定することができる便利アイテムです。
世界各国のバリスタが絶対使用するくらい必需品なので、美味しいコーヒーを淹れるためにもっていない方は準備することをオススメします。
弘前のススメ珈琲のオススメ動画
粕谷哲さんの4:6メソッドの解説動画
粕谷哲さんは2016年に「ワールドバリスタチャンピオンシップ(World Barista Championship)」で優勝し、世界一のバリスタとして認められた日本が誇る世界的バリスタです。
コーヒーの抽出方法やテクニックにおいて革新的なアプローチを取り入れており、その中でも特に誰でも美味しいコーヒーが淹れられると話題の「4:6メソッド」と呼ばれる抽出法が知られています。この4:6メソッドでは落ち切ってからお湯を注ぐというコーヒー業界の常識を覆した抽出方法で世界中のコーヒーファンを驚かせました。
動画内でもとてもわかりやすく解説しているのでこれからコーヒーを自宅で飲むけど淹れ方がわからない!という人にもオススメしたい動画です。
畠山大輝さんの基本レシピ動画
畠山さんはSCAJ2019(スペシャルティコーヒー協会主催の催事)内で同時開催された競技会(ジャパンブリュワーズカップ2019と ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ2019)で史上初の同年度2冠の優勝をしたバリスタです。
そんな日本チャンピョンが紹介する抽出の基本レシピ解説動画になっていました。
こちらの動画も柏谷さん同様これからコーヒーを飲もうとしている方や、さらに美味しいコーヒーを淹れたいと思っている人など幅広い層で楽しめる動画になっています。
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